微分方程式(びぶんほうていしき)は、未知関数とその微分を含む方程式です。微分方程式は物理学、工学、生物学、経済学などの多くの分野で現象をモデル化するために使われます。以下に、微分方程式の基本的な概念と重要なポイントをまとめます。
微分方程式の基本概念
分類:
- 常微分方程式(ODE):未知関数が一つの独立変数にのみ依存する微分方程式。例:$\frac{dy}{dx} = y$
- 偏微分方程式(PDE):未知関数が複数の独立変数に依存する微分方程式。例:$\frac{\partial u}{\partial t} = c^2$ $$\frac{\partial^2 u}{\partial x^2}$$
階数:
- 微分方程式の最高階の微分の次数をその方程式の階数と呼びます。例えば、$\frac{d^2y}{dx^2} + y = 0$は2階の常微分方程式です。
線形性:
- 線形微分方程式:未知関数とその微分が一次式として現れる微分方程式。例:$\frac{dy}{dx} + p(x)y = q(x)$
- 非線形微分方程式:未知関数やその微分が一次式以上の形で現れる微分方程式。例:$\left( \frac{dy}{dx} \right)^2 + y = 0$
常微分方程式(ODE)
解法:
- 分離変数法:変数を分離して積分する方法。例:( \frac{dy}{dx} = g(x)h(y) ) を ( \frac{1}{h(y)} dy = g(x) dx ) に分離。
- 積分因子法:1階線形微分方程式 ( \frac{dy}{dx} + p(x)y = q(x) ) の解法。
- 特性方程式:定数係数の線形微分方程式 ( a_n \frac{d^n y}{dx^n} + a_{n-1} \frac{d^{n-1} y}{dx^{n-1}} + \cdots + a_1 \frac{dy}{dx} + a_0 y = 0 ) の解法。
具体例:
- 一次方程式:( \frac{dy}{dx} + p(x)y = q(x) )
[
y = e^{-\int p(x)dx} \left( \int q(x)e^{\int p(x)dx} dx + C \right)
] - 二階同次線形方程式:( \frac{d^2y}{dx^2} + p\frac{dy}{dx} + qy = 0 )
[
y = C_1 e^{r_1 x} + C_2 e^{r_2 x}
]
ここで、( r_1 ) と ( r_2 ) は特性方程式 ( r^2 + pr + q = 0 ) の根です。
偏微分方程式(PDE)
- 分類:
- 楕円型:例:ラプラス方程式 ( \Delta u = 0 )
- 放物型:例:熱伝導方程式 ( \frac{\partial u}{\partial t} = k \Delta u )
- 双曲型:例:波動方程式 ( \frac{\partial^2 u}{\partial t^2} = c^2 \Delta u )
- 解法:
- 変数分離法:解を ( u(x,t) = X(x)T(t) ) の形に分離する方法。
- フーリエ変換:複雑な偏微分方程式を解くためにフーリエ変換を利用する方法。
- 具体例:
- 熱伝導方程式:
[
\frac{\partial u}{\partial t} = k \frac{\partial^2 u}{\partial x^2}
]
変数分離法を使って解くと、解は次のようになります:
[
u(x, t) = \sum_{n=1}^{\infty} e^{-k(\frac{n\pi}{L})^2 t} \sin\left( \frac{n\pi x}{L} \right)
] - 波動方程式:
[
\frac{\partial^2 u}{\partial t^2} = c^2 \frac{\partial^2 u}{\partial x^2}
]
ダランベールの解法を使うと、解は次のようになります:
[
u(x, t) = f(x – ct) + g(x + ct)
]
応用
- 物理学:
- ニュートンの運動方程式、マクスウェルの方程式、シュレディンガー方程式など、物理学の基本法則は微分方程式の形で表現されます。
- 工学:
- 振動、熱伝導、流体力学などの工学的問題をモデル化し、解析するために微分方程式が使用されます。
- 生物学と医学:
- 生物学的モデル、薬物動態モデル、疫学モデルなどに微分方程式が使用されます。
微分方程式は、現実の複雑な現象を数学的にモデル化し、解析するための強力なツールです。解法の理解と応用は、様々な科学技術分野での問題解決に役立ちます。