脳はこうしてあなたの心を作る
実際、あなたの心は、あなたの脳、あなたの体、そして周囲の世界が作り上げたものなのだ。
リサ・フェルドマン・バレット著archive page
2021年8月25日
科学フォトライブラリー
あなたの心とは何ですか?奇妙な質問かもしれないが、強いて言えば、意識、夢、感情、記憶など、自分を自分たらしめている部分と言えるかもしれない。科学者たちは長い間、心のそのような側面には、恐怖を表す回路や記憶を表す領域など、特定の脳の場所があると信じていた。
しかし近年、人間の脳は実はごまかしの達人であり、あなたの経験や行動からはその内部の仕組みは見えてこないことが分かってきた。あなたの心は、実はあなたの脳、あなたの体、そして周囲の世界が作り上げたものなのだ。
一瞬一瞬、あなたが自分の周りの世界を見て、考え、感じ、ナビゲートするとき、あなたの知覚は3つの材料から作られている。ひとつは、センス・データと呼ばれる外界から受け取る信号である。光波は網膜に入り、花咲く庭や星空として体験する。圧力の変化は蝸牛や皮膚に届き、愛する人の声やハグになる。化学物質は鼻や口に届き、甘味やスパイスに変化する。
あなたの経験を構成する第二の要素は、静脈や動脈を駆け巡る血液、肺の膨張と収縮、お腹の音など、体内の出来事から得られる感覚データである。このシンフォニーの多くは無音で、あなたの意識の外にある。もしあなたが、内なるすべての引っ張りやざわめきを直接感じることができたなら、皮膚の外にあるものに注意を払うことはないだろう。
最後に、3つ目の要素は過去の経験だ。これがなければ、自分の周囲や内側にある感覚データは無意味なノイズになってしまう。それはまるで、話せない言語の音にさらされるようなもので、ある単語がどこで終わり、次の単語がどこで始まるのかさえ分からなくなる。脳は過去に見たこと、やったこと、学んだことを使って、現在の感覚データを説明し、次の行動を計画し、次に何が起こるかを予測する。これはすべて、あなたが指をパチンと鳴らすよりも速く、目に見えない形で自動的に行われる。
これら3つの要素がすべてではないかもしれないし、他の種類のマインドを作るルートがあるかもしれない。しかし、人間の心は、脳が身体や外界と一瞬一瞬、ユニークな会話を続けることによって構築される。
脳が記憶するとき、過去の断片を再創造し、それらをシームレスに組み合わせる。私たちはこのプロセスを「思い出す」と呼んでいるが、実際は組み立てているのだ。実際、脳は同じ記憶(より正確には、同じ記憶として経験するもの)を毎回異なる方法で組み立てている。ここで言っているのは、親友の顔や昨日の夕食を思い出すような、何かを思い出すという意識的な体験のことではない。ある物や言葉を見て、それが何であるかを瞬時に知るという自動的で無意識的なプロセスについて言っているのだ。
認識という行為はすべて構築されたものだ。目で見るのではなく、脳で見るのだ。他の感覚も同様だ。脳は、今入ってきた感覚データと、以前同じような状況で同じような目標を持ったときに感じたものとを比較する。脳はすべての感覚を一度に構築し、それらを神経活動の壮大なパターンとして表現することで、あなたを取り巻く世界を経験し理解することができるのだ。
脳はまた、過去の断片を斬新な方法で組み合わせる驚くべき能力を持っている。単に古い内容を復活させるだけでなく、新しい内容を生み出すのだ。例えば、羽の生えた馬の絵のように、今まで出会ったことのないものを認識することができる。ペガサスを実際に見たことはないだろうが、古代ギリシャ人のように、初めてペガサスの絵を見て、それが何であるかを瞬時に理解することができる。
あなたの脳は、見慣れた物体に、その物体の物理的性質の一部ではない新しい機能を課すことさえできるのだ。図1の写真を見てほしい。今日のコンピューターは機械学習を使って、この物体を簡単に羽毛と分類することができる。しかし、人間の脳はそうではない。この物体を森の中で見つけたなら、確かにそれは羽だ。しかし18世紀の作家にとってはペンだ。シャイアン族の戦士にとっては名誉の象徴。諜報員のふりをする子供にとっては、便利な付け髭だ。あなたの脳は、物体を物理的な属性だけで分類しているわけではない。