2022年のノーベル物理学賞について

プレスリリースはこちら

https://www.nobelprize.org/prizes/physics/2022/press-release/

要約

2022 年 10 月 4 日
ノーベル物理学賞を次のように決定しました。

アラン・アスペ
パリサクライ大学およびエコール・ポリテクニーク、パレゾー、フランス

ジョン・クラウザー
J.F.クラウザー&アソシエイツ、ウォルナットクリーク、カリフォルニア州、米国

アントン・ザイリンガー
オーストリア、ウィーン大学

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彼らは、
「量子もつれ」について画期的な実験を行っていて
その成果は、理論から技術への道を切り開くものでした。

「量子もつれ」の歴史と背景

量子力学の不可解な効果が応用され始めています。
量子コンピュータ、量子ネットワーク、安全な量子暗号通信など、
大きな研究分野があります。

これら開発には、
量子力学によって2つ以上の粒子がもつれた状態で存在できるようになったことが重要な要因の1つです

量子力学では、2つ以上の粒子を
「もつれ」状態として存在させることができます。

長い間、
この相関は、もつれたペアの粒子に隠された変数、
つまり実験でどのような結果を出すべきかを指示する命令が含まれているからではないかという疑問がありました。

1960年代、
ジョン・スチュワート・ベルが、
彼の名を冠した数学的不等式を開発しました。
ベルの不等式というやつです。
これは、「隠れた変数がある場合、多数の測定結果の相関はある値を超えることはない」というものです。

功績

ジョン・クラウザー

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ジョン・クラウザーは、
ジョン・ベルの考えを発展させ、
実用的な実験につなげました。

具体的には、
特殊な光を照射すると絡み合った光子を放出できる
カルシウム原子を使って、光子の偏光を測定するために、
左右にフィルターを設置し、偏光を測定しました。

彼が測定したところ、
ベルの不等式を明らかに破り、量子力学を支持しました。

これは、
量子力学が隠れた変数を使う理論に
取って代わられないことを意味しています。

アラン・アスペ

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ジョン・クラウザーの実験の後にも、
いくつかの理論の欠陥が残っていました。

アラン・アスペは、欠陥を塞ぐ方法として
もつれたペアが発生源から離れた後に 測定設定を切り替えることができる装置を開発し、
ペアが放出されたときに存在していた設定が
測定結果に影響を与えることがないことを実証しました。

具体的には、
原子を励起する新しい方法を用いて、
絡み合った光子をより高速に放出させること、
また、異なる設定に切り替えることにも成功しました。

アントン・ザイリンガー

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アントン・ザイリンガーは、
洗練された道具と長い実験の積み重ねによって、
量子状態のもつれ合いを利用することに着手しました。

特に、彼の研究グループは、
量子テレポーテーションと呼ばれる、ある粒子からある粒子へ量子状態を遠隔操作できる現象を実証しました。

具体的には、
特殊な結晶にレーザーを当てて、もつれたペアの光子を作り
乱数を用いて測定設定をずらし、乱数を使って計測の設定を変えました。ある実験では、遠くの銀河からの信号を使って、フィルターをコントロールし、信号が互いに影響し合わないようにフィルターを制御する実験もありました。

より具体的な科学的背景はこちら

How entanglement has become a powerful tool

https://www.nobelprize.org/uploads/2022/10/popular-physicsprize2022.pdf

For experiments with entangled photons, establishing the violation of Bell inequalities and pioneering quantum information science

https://www.nobelprize.org/uploads/2022/10/advanced-physicsprize2022.pdf