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SaaSはなぜ「死んだ」と言われるのか

Posted on 2026年2月6日2026年2月6日 by DeepRecommend

「SaaS is Dead」は誇張ではない。壊れたのは「前提」

「SaaS is Dead」。
この言葉を聞いたとき、多くの日本人は条件反射的に否定する。SalesforceもServiceNowも業績は出しているし、SaaSがすぐになくなるようには見えない。だからこれはいつものシリコンバレー流の大げさな煽りだ、と。

だが、この理解は半分正しく、半分は致命的に間違っている。SaaSが突然この世から消えるわけではない。しかし、SaaSというビジネスモデルが成立していた前提条件は、すでに音を立てて崩れている。

SaaSが強かった理由は、技術的に優れていたからではない。経済構造が時代に合っていたからだ。人間がソフトウェアを操作することを前提に、画面の使いやすさが価値になり、席数に応じた月額課金が合理的で、データはアプリごとに分断され、業務フローは人間の判断を中心に固定されていた。その世界では、優れたUIと機能の多さが競争力になった。

しかし今、その世界そのものが終わりつつある。
理由は単純で、UIが価値の中心ではなくなったからだ。

Satya Nadellaが語ったとされる「SaaS is dead」という言葉は、SaaSの葬式を宣告したものではない。あれは警告だった。企業向けソフトウェアは、本質的にはデータを作って、読んで、更新して、消すだけの存在に過ぎない。その上に乗っている複雑な画面や操作体系は、人間という不完全な存在に合わせた妥協の産物にすぎない、という指摘だ。

人間は遅く、忘れ、操作を間違える。だからこそUIが必要だった。だがAIは違う。AIはAPIを直接叩き、データを横断的に読み、意図を理解して実行する。そこにダッシュボードは必要ない。複雑な画面遷移もいらない。UIはAIにとって価値ではなくノイズになる。

ここで重要なのは、「SaaSが死んだ」という話の正体だ。正確に言えば、SaaSそのものが死んだのではない。SaaSだけで完結する世界が死んだのである。

SaaSを内側から破壊する「Agentic Platform」という黒船

今、SaaSの価値を内側から崩している存在がある。それがAgentic Platform Companies、いわゆるエージェント型プラットフォーム企業だ。

これは単にAIを搭載したSaaSではない。エージェントを中核に据え、人間の代わりに考え、判断し、実行することを前提に設計されたシステム群である。複数の業務アプリケーションやデータソースを横断し、企業全体を一つの意思決定空間として扱う。人間は操作する存在から、目的を与えて結果を確認する存在へと変わる。

この構造が何を意味するか。
UIは必須ではなくなり、価値は機能ではなく成果になる。課金は席数ではなく利用量や結果に紐づき、データは分断ではなく統合が前提になる。

この変化の中で、最も厳しい立場に追い込まれているのが中堅SaaS企業だ。AlixPartnersの調査では、年商100億円未満の上場SaaS企業を分析した結果、高成長企業の比率が急激に低下し、顧客維持率も目に見えて悪化していることが示された。これは一時的な不況ではない。構造的な劣化だ。

理由は挟み撃ちにある。上からはMicrosoftやGoogle、Amazonといった巨大プラットフォームが、AIを既存の製品群にほぼ無料で組み込んでくる。下からはAIネイティブなスタートアップが、軽く、安く、速く進化するツールを次々に出してくる。

この状況で、日本企業がやりがちな判断がある。
「とりあえずAI機能を足そう」という判断だ。

しかし、これは最も危険な選択肢になる。AIを後付けしたSaaSは、計算コストだけが増え、UIはさらに重くなり、差別化は消える。結果として、粗利も成長率も同時に落ちていく。AIを載せた瞬間に強くなるのではない。AIを前提に再設計されていない限り、むしろ弱くなる。

勝者の条件は決まっている。残るのは誰か

では、誰がこの変化の中で生き残るのか。答えはすでに見えている。

生き残る企業には共通点がある。AIが単なる機能ではなく、OSレベルで中枢に組み込まれていること。企業内外のデータを統合する力を持っていること。計算資源を自ら支配していること。席数ではなく成果で課金できること。そして、API経済の中心に位置していることだ。

この条件を満たす企業は多くない。Alphabet、Microsoft、Amazon、Oracle、Salesforce、IBM、SAP、OpenAI、そしてPalantir。このあたりが有力候補として名前が挙がる理由は明確だ。彼らはAIをアクセサリーとして扱っていない。AIを企業ソフトウェアの“脳”として設計している。

特に象徴的なのがPalantirだ。過大評価だと批判されがちだが、実態を見ると評価軸がズレていることがわかる。PalantirはSaaS企業ではない。国家や大企業の意思決定そのものを統合するレイヤーを押さえにいっている。UIを売っているのではなく、判断と実行の基盤を売っている。

ここに、従来型SaaSとの決定的な違いがある。

日本企業・日本SaaSに残された現実的な選択

この変化は、日本企業にとっても他人事ではない。むしろ、日本はより厳しい立場にある。なぜなら、UI中心、業務フロー中心、人間中心というSaaS的発想が、企業文化として深く根付いているからだ。

日本のSaaS企業に残された道は限られている。エージェント前提でプロダクトを再設計するか、APIとして他社のAIに組み込まれる部品になるか、業界特化型のAIとして垂直統合を目指すか、あるいは価値が残っているうちに売却や撤退を選ぶかだ。現状維持という選択肢は、もはや存在しない。

経営者が今、真剣に向き合うべき問いはシンプルだ。自社のUIはAIにとって本当に必要なのか。人がやらなくていい作業を前提に、プロダクトは設計されているか。成果で課金できる構造になっているか。データは分断されていないか。自分たちは操作ツールを作っているのか、それとも意思決定装置を作っているのか。

結論は明確だ。
SaaSは死んだ。正確に言えば、人が操作することを前提としたSaaSは死んだ。

これからの世界では、エージェントが考え、エージェントが動き、人間は目的だけを渡す。ダッシュボードの時代は終わり、結果だけが残る。

「SaaS Ave.に不動産を建てるな」と語ったあるCEOの言葉は、決して大げさではない。街はすでに変わった。気づいていないのは、まだそこに住んでいる人たちだけなのだ。

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